2012年6月11日月曜日

wearerとFURAGO



こんばんは。
センチメンタル日本代表、wearerのYKです。

wearerとFURAGOの2マンまで、とうとう1週間を切りました。
僕は、もうだいぶそわそわしてます。
それでも平日は勤労しなくてはならないので、もう大変。
業務に支障が出ないようにそわそわを押し殺しているうちに、日々が過ぎて行きます。

今日は少しだけ長くなるかもしれない。

去年のゴールデンウィークに、僕らwearerはFURAGOと出会った。
2011年5月4日、Stun Smithのレコ発。
FURAGOのことは、それまで名前も知らなかった。

この時のゴールデンウィーク、渋谷LUSHの宮内くんが1週間連続で企画を仕切ることになっていて、wearerはどこでも好きなところに出ていいと誘われていた。
中でも、ヒラオコジョー・ザ・グループサウンズとか、歌ものっぽいバンドが集まる5月3日のイベントを勧められたような気がする。

でも僕は直感的に、迷わずに、birds melt skyやNaLasが決まっていた5月4日を選んだ。
すてきな選択をしたと思う。

リハーサルではじめてFURAGOの演奏を見た僕は、いきなり度肝を抜かれた。
今にもここから駆け上っていきそうな気概と自信に満ち溢れた演奏だった。
ものすごい勢いと野心のある若そうなバンドが出てきた!と、すごく脅威に感じたっけ(そしたら意外と同世代だった)。

出番はトップバッターだったにも関わらず、FURAGOの時にはお客さんがたくさん入っていた。
この日僕たちの演奏はものすごくいまいちだったのだけど(僕のギターが音出てなかったり)、よしたかくんが「baby blue」をすごく誉めてくれた。
うちの陽介とスミタくんも、ドラマー同士、お互いのプレイにシンパシーを感じていたり(ふたりとも四つ打ちドラマーかつアヒト・イナザワの影響大)。
僕は僕でsoosuに「wearerは90年代だね」って言われて、こいつわかってんなー、と思ったり。

とにかく、僕らはすぐに意気投合して、僕とsoosuは終電なくすまで飲んでた。
僕は翌日すぐにsoosuに連絡して、翌月に迫っていたwearerの企画にFURAGOを誘ったのだった。

それからはあっという間だった気もするし、とてもとても長い時間が流れたような気もする。
とにかく今日までの約1年くらいの間、僕らの活動はいつもFURAGOとともにあった。
共催で企画をやったり、お互いのライヴを見に行ったり、打ち合わせと称して飲んだり、ただ飲んだり飲んだり。
無意味な、それでいて有意義な、たくさんの話をして、たくさんの夜をともに過ごした。

僕らには音楽性を越えた親和性があり、同世代としての共感があり、 何よりお互いに確かな志があった。
僕らはそれぞれ自立した社会人であり、それぞれに守らなくてはならない暮らしがあり、それでも夢を追いかけていた。
そしてそれ以上に、彼らは僕にとって、だいじな友達だ。

このタイミングでいうと何か嘘くさく聞こえるかも知れないけれど、はじめて見たときからスミタくんのドラムはすごかった。
僕は四つ打ちに目がないのだけれど、こんな圧倒的な音圧で四つ打ちを叩くドラマーがいるのか、と思った。
それに、スミタくんのドラムはとにかく鳴りがよかった。響きが好きだな、と思った。

ある時、下北で友達がDJをするというので遊びにいくと、スミタくんが現れた(彼は様々なイヴェントに顔を出す、実にマメな人なのだ)。
そこでしこたま飲んで、帰りしなにふたりでラーメンを食べたのだった。
その時スミタくんは僕に、自身のバンド観 / 音楽観をいろいろと聴かせてくれたっけ。
独自のドラム練習法のこと。四つ打ちに対するこだわりのこと。音楽を文系的な感覚でとらえるのではなく、理系的に数値でとらえることについても。ああ、この人は発想が理系なんだ、と思った。理系ドラマーだ。
僕には思いつきもしない角度から音楽をとらえている人がここにもいた、と素直に感心した。
そして僕は、自分のバンドに対する考えの浅はかさ(特に技術的な側面について)を少しだけ反省して眠りについた。

こういうことを書くと「またYKは適当なことばかり言いやがって」と鼻白む彼の顔が容易に思い浮かぶので、もうこれ以上スミタくんのことは誉めない。


wearerは、エレクトロでもなければダンス・ロックでもなく、シューゲイザーでもなければ、パワーポップでもない。
僕らは、バンドを運用する上で時に有用であろう「ジャンル」という看板を何も掲げることができずに、ここまできた。そして掲げるつもりもなかった。
僕らはよくも悪くも、どの「シーン」にも属することなく、活動を続けてきた。
特定のイヴェンターに気に入られて、同じイヴェントに定期的に出るようなことすらなかった。
僕たちは、ただ、寄る辺のないロック・バンドだった。

だから僕たちは自分たちのシーンが作りたいと思うし、その時その時の出会いを大事にしてきたつもりだ。
そのたくさんの縁の中で、FURAGOに出会えたことは本当に幸運だと思う。
彼らは、あいまいな僕らと違って、すごくヴィヴィットでコンセプチュアルだから。確固たる立ち位置があるから。
そんな彼らに導かれて、たくさんのすてきな光景を見て来たし、たくさんの仲間に出会うこともできた。
改めて、ありがとう。


今年の4月、僕らは代官山で坂本美雨さんと対バンした。
僕らはすごく気持ちのはいった演奏をすることができたし、とてもとてもすてきな夜だったのだけれど、何より忘れられないのは、同じ日に違う場所でライヴをしていたFURAGOのことだ。

その日彼らは渋谷で、とても人気のあるイヴェントに出演していた。
にも関わらず、彼らは自分たちの出番が終わるやいなや、僕たちの演奏に間に合うようメンバーみんなで代官山に飛んで来てくれたのだった。
まるで僕の心もとない気持ちを見透かすかのように。
僕は本当にうれしかったし、本当に心強かったよ。

つまりFURAGOは、そういう最高のやつらなのです。
カリオストロの城的に言うと「なんと気持ちのいい連中だろう」ってことです。


6月16日、とにかくいい演奏がしたい。
またここからあたらしいストーリィがはじまるような、そんな2マンにしたい。
いつか誰かが思い出して、ふと口ずさむような、そんな夜にしたい。

あらためまして、我々はwearerと申します。対するはFURAGOでございます。
相手にとって不足はございません。
みなさん、どうぞよろしくお願いいたします。
 

2012年6月6日水曜日

よしたか君とわたし。(とあるミュージシャンの休日)

FURAGOのライヴを見に行く。
楽し過ぎて飲み過ぎる。
終電を逃す。
よしたかくんの家に収容される。
いつもの夜だ。

何の予定もあるはずのない僕らの休日は、いつだってなし崩しに始まる。

これはとあるミュージシャンたちの、なんてことはない休日の話。






ひどい二日酔いで目覚めました。胃もたれもかなりきついです。
なんであれだけ飲んだ後にラーメンなど食べたのだろう…まったく学習のない後悔ばかりが募ります。
しかしながら、朝起きたらガストに行くことだけは決まっています。
「こんな時代に信じられるのは、ガストの朝定食の安定感だけ。」



とりあえず朝からビールを飲んでみます。
それにしてもガストの朝定食のクオリティは半端ないです。












 ミヤザワくんもやってきました。














もっともらしい顔をしていますが、残念ながら何も考えていません。
いつものことながら、決断力の乏しい大人が集まってしまいました。



下北にて機材を預けます。










何の考えもなしに渋谷へやってきました。
「坂が立ちはだかるようなんですが…」
よしたかさんの足腰は着実に衰弱しているようです。












代々木公園でラオス・フェスティバルをやっているという情報をキャッチ。







早速得体の知れない食べ物に反応してしまいます。
「ラーメンバーガー」って…ラーメン好きもハンバーガー好きも,誰も喜ばないであろうことが容易に想像できます。


ラオスビールと腸詰めを購入。


ラオス帽子もかぶってみる。


とにかく飲みます。


しこたま飲んでいます。


ラオス焼き鳥の美味しさに衝撃を受けたミヤザワくんが、店の親父をいきなり表敬訪問。
「ラオス焼き鳥」とか言ってますが、ラオス産なのは炭だけだということは、ここだけの話です。



フェスだけに、バンドの演奏もありました。
「ウィー・アー・ザ・ワールド」のようなピース感のある曲を演奏していたのですが、
その直後の女性ボーカルMCが、開口一番「ねちゃねちゃしたよだれがたくさん出て困る」といったもので度肝を抜かれました。













ここで、良識的な社会人であるミヤザワくんが、渋谷の雑踏に消えて行きました。
「また後で連絡します」といつも言うのですが、戻って来た試しはありません。




残された我々は、よしたかくんの大好きなきゃりーぱみゅぱみゅのCDを買いにタワレコへ。
 

「やっぱりこっちでお願いします。」


「初回版もうないんかい!!!!」 














本格的にすることがなくなってきました。
そこで、よしたかくんに導かれるまま進んで行きます。


いったいどこへむかっているんでしょうか。
心なしか不穏な空気が流れてきたような感じがしますが…


馬かよ……。
夢はだいぶ膨らみましたが、膨らんだだけで弾けました。 












その後、あてもなく渋谷をさまよっていると、よしたかくんがその驚異的な動体視力でYDO氏(ベルノバジャムズ / ちくわテイスティング協会)を発見。
お互いほとんど面識はありませんが、飲みに行くことに。
「YDOさん、なんかいい店ありますか?」
「んー、路上じゃない?」
経済的!!


結局ラオスフェスに戻ってきました。
そんな暇人は渋谷じゅう探しても僕たちだけです。


するとどういうわけかbirds melt skyの前田さんたちが偶然合流。
スタンド使いは引かれ合うというのは本当のようです。



最終的にwearerスタッフのフナがやってきて、渋谷の激安居酒屋にログインしました。












それにしても、とにかく金曜の夜から、絶え間なくずっと酔っぱらっている週末でした。
僕らの週末はだいたいこんな感じです。
しょうもなく、それでいて、愛おしく、かけがえがなく。
渋谷の街で僕らを見かけたら、是非声をかけてやってください。 飲みましょう。
僕ら、いつでも暇ですから…

2012年5月18日金曜日

ヒップなギャッツビィ、今を生きる。〜中澤壮介概論〜







FURAGOのフロントマンであり、コンポーザーであり、リーダーであるsoosuこと中澤壮介。
群雄割拠のダンス・ロックのシーンの中でもきわめて個性的であり、また際立った求心力を持つFURAGOの楽曲は、彼の中から、どうやって生まれるのか。
いかにもリーダー然とした彼にとってのバンドとは、メンバーとは。
そして、何よりwearerとは。
とにかく根掘り葉掘り聞きました。



俺は、FURAGOでアートをやりたいと思ってるんだよね。

-いきなり言うね(笑

いや、これはほんとに。
アートって、固定概念をぶち壊すものだからさ。
バンドの編成や楽曲の構成、とにかく、「こんなことやっていいんだ」「これってありなんだ」っていうことをやりたいんだよね。
そこに俺のルーツを混ぜていければいいかなって。

-結構狙ってダンス・サウンドをやってるのかと思ってたんだけど。

それはないね。
ダンス・ロックとか言われてもピンとこないなあ。まずコンセプトありきだから。
今のサウンドを模索し始めた時、既に「シミュレーショニズムの実践」っていうコンセプトが頭にあってさ(シミュレーショニズム…1980年代のニューヨークを中心に広まった美術運動。近代芸術の唯一性(アウラ)に反対し、大衆芸術のイメージを、カット・アップ、サンプリングといった手法を用いて表現することが特徴)。
ほら、俺らの世代って、サンプリングとかが当たり前にあった世代じゃない?
何か伝えたいことがあるとき、既存のものを拝借して、より効果的に伝えるって感覚。
それこそが、俺らの世代のアートだよ。
それが結果としてダンス・サウンドになっただけであってさ。

-なるほどね。

楽曲ひとつとってもそうだよ。コンセプトありき。
例えば俺にとってひっかかるもののひとつに、「1988年」っていうキーワードがある。
「BEN JOHNSON」って曲は、1988年のソウル・オリンピックの曲。
あの時のベン・ジョンソン(ジャマイカ出身の陸上短距離走選手。ソウル・オリンピックで圧倒的な強さを見せつけたが、後にそれが薬物の不正使用、いわゆるドーピングによるものだと発覚した)のインパクトが、とにかくすごくてさ。
カール・ルイスよりも断然ベン・ジョンソンなんだよ。もう圧倒的だったじゃない?

-で、それが嘘だったという(笑

そうそう(笑
で、あの時ベン・ジョンソンはどんな気持ちでレースに臨んだんだろう、って思ったんだよね。
当然ドーピングはしてる。
だけど、あのレーンに入った時は、そんなこと全部忘れて、勝つことしか考えてなかったんじゃないかな、てさ。
その勢いを曲にしたかったんだよね。
イントロの部分のリリックは、各選手のコールなんだよ。
ファイナルで並んだ8人の名前。
それ見て「行け!行け!行け!」って言ってる子供たち。
それらをすべて取り巻く状況だよね。 
それに…100mっていう競技が持ってる静と動の波形は、俺らのもってる音楽の波形とおんなじなんだよ。

-「1988年」にひっかかるのはなぜなんだろうね?

 
それはやっぱり、「1988年」ってバブルの象徴だからだよ。
「CANTI IIKURA」も1988年にまつわる曲。
文字通り、飯倉にある「キャンティ」を舞台にどんな音ができるかなって思ってさ。(キャンティ:港区麻布台3で春日商会が運営するイタリア料理店のこと。1960年の創業以来、松任谷由実など各界著名人が利用するレストランとして知られている)。

-サウンドでバブルを表現したと。

そうだね。
でもさ、実はリリックは、福島のことを歌ってんだよね。

-福島?

そう。
あの時のバブルって、きっとものすごい電気使ってたわけじゃない?そんな状況の中、キャンティでバブルを楽しんでたやつが福島の出身だったら、今どんな気持ちでいるんだろうってね。

-極端なストーリィだね。

俺にとってさ、かっこいいものって、「ギャップがあるもの」なの。
ほんとそれだけ。
だから、もっとこうしたら気持ちいいだろうな、ハマるだろうな、っていうのはわかるけど、そこにあえて正反対のベクトルのものをぶつけてる。

結構実験的なんだよ、FURAGOのサウンドは。
それに、ストーリィがなかったら、曲が書けないんだよ、俺は。
細かいペルソナを描きこむことによって、サウンドを生み出すんだ。リリック以前にさ。

-話を聞いていると、soosuの中で、かなり具体的なヴィジョンがあるようだけど。
soosuの中で練られたコンセプトやストーリィを実現するのがメンバーってことなのかな。

それは少し違うな。
むしろメンバーには、「俺に合わせるな」って言ってる。

-というと?

 
俯瞰して見たとき、FURAGOのメンバーって、揃った時点でかなり面白いんだよ。
スミタは学生の時から俺とバンドやってたけど、後のメンバーはぜんぜん違うところから入ってきて。ほんとバラバラなの。
ミヤザワはラテンなんだよね。俺の中にはない要素を持ってる。でも、ASIAN DUB FOUNDATIONとか、Bob Marleyとか、すぐに通じる部分もある。
ゲーシーはポスト・ロックが好きだったりとかさ。

-その中でもヨシタカの存在は、ちょっと特殊だと思うんだけど。

俺がヨシタカをFURAGOに入れた理由は2つ。
1つは、単純に「なんかあいつ面白い」ってこと。ヨシタカがいるだけで、FURAGOは「普通のバンド」じゃなくなるなって、思ったから。
もう1つは、俺のシャドウが欲しかったんだよね。

-シャドウ?

俺は当時、ひとりでシンセサイザーを弾きながら歌うことに限界を感じてたんだよね。
そこで、もうひとりシンセと歌ができる、俺のシャドウが欲しかったってわけ。
それに、音楽でシミュレーショニズムを実践する上で重要な、サンプリングって機能を使いこなせるのは、あいつだけだしね。

-確かにみんな、テクニックがあるだけじゃなくていろんなルーツを持ってるよね。

そこで、こいつらがひとつにまとまったらどんな音出すんだろう、って思っちゃったんだよね。俺は。
だからコンセプトはもちろん大事だけど、それ以前に、今のメンバーが揃った時点で、曲はもう出来上がってるようなもんなんだよ。

-実はメンバーありきなんだね。

そして俺がやりたいことをメンバーに提示すると、2倍3倍になって返ってくる。そこがバンドの面白いところ。じゃなかったら、バンドをやるつもりはない。


-なるほどね。
soosuの世界観を前面に押し出してるサウンドが、実はメンバーから出てきたものを尊重した結果だったってことか。
さっきからFURAGOを語る上で「バブル」っていうキーワードが重要に思えるんだけど、「バブル」を表現したサウンドのわりには、どこかせつない感じがするのはなぜだろうね。

だって、そもそもバブルって儚いじゃん。

-ああー。

俺らはさ、パーティがやがって終わっちゃうってことを知ってるわけ。
だからバブルって俺にとってはせつなくて儚いよ。

-なんか少しわかった気がする。
soosuはロスト・ジェネレイションなんだな。フィッツジェラルド(スコット・フィッツジェラルド:アメリカの作家。1920年代にそのピークを迎えたと言われている。いわゆる「ロスト・ジェネレイション」を代表する作家のひとり)みたいなさ。

ああ、そういうとこはあるね。

-soosuはギャッツビィだってことだよ、要は。(ギャッツビィ:スコット・フィッツジェラルドの代表作「グレート・ギャッツビィ」の主人公。大邸宅に住み、夜毎豪勢なパーティを開催する富豪だが、彼の胸のうちには拭い去れないある想いがあった…)

悪くないね、それ(笑

-そのギャッツビィなsoosuは、なぜ歌うんだろうね?

自分が生きた証拠、自分が生きている「今」をパッケージしたいってことかな。
俺自身、時代とともに移り変わっていくからさ。
その「今」を残したいんだよ。生殖本能みたいなもんだよ。

-その音楽を、誰に一番聞いて欲しいと思う?

今を生きている子供たち。これから生まれてくる子供たちに伝えたい。
これからの人たちに聴かせたいな。
あとは椹木 野衣(さわらぎ のい:美術評論家。代表的な著作に評論集『シミュレーショニズム ハウス・ミュージックと盗用芸術』(洋泉社)。シミュレーション・アートとハウス・ミュージックを〈サンプリング・カットアップ・リミックス〉というキーワードで横断的に論じ、1990年代の文化を予見したと言われる。)。あの人には絶対届けたいね。

-シミュレーショニズムを語るうえではずせない人だもんね。

そのとおり。
っていうか、FURAGOの曲には固有名詞がたくさん出てくるんだけど、みんなその人たちに向かって歌ってるようなもんだからね。
俺はベン・ジョンソンにも、キャンティのオーナーにも聴かせたいよ、FURAGOを。

 
-なんか聞けば聞くほど、FURAGOとwearerは何もかもが違う音楽をやってると思えてくるんだけど、この2バンドがいっしょにやれるのは、どうしてだと思う?

言うなればさ、FURAGOが村上龍なら、wearerは村上春樹なんだよ。

-それわかりやすいなあ(笑

でしょ?
極端に違うんだよ。極端に違うんだけど、完全に違うわけじゃない。ある同じ時代を生きてきた人たちが、 お互いポップネスを持って、それぞれの方法でやってる。
そこには同時代的な共通項があるんだよ。
龍と春樹を同時に読む人なんてたくさんいるじゃん?

-なるほどね。

それから、単純に俺とYKの間に、共通するところがすごくあるからね。
きっと、おんなじ感情体験をしてるというか。人間としてベースの部分はおんなじなんだなと思う。
だから、YKの作る曲の世界、俺はわかるよ。
でも俺には俺のやり方があるってこと。

-YKがsoosuの共感を得られるとはね(笑
でも、ギャッツビィも、計り知れないハッピーとブルーをあわせ持つ人物像だものね。

俺の座右の銘に、「面白半分/ハーフ・シリアス」ってのがあるんだよね。
何をやるときにも、そのバランスが大事なんだ。シリアスな部分がなかったら、ただチャラいだけだからね。
それに、俺はミュージシャンは、オーディエンスに対して、楽しんでる姿を提供しなくちゃならないと思ってる。
悲しみも苦しみもすべて受け入れてハッピーに語れちゃうほうがキュンとくるよね。
やっぱり表現にはユーモアがなくちゃね。

-じゃあ最後に。soosuにとってFURAGOとは?

俺は常にヒップな存在でいたいんだよ。その時代その時代の中で。
そういう俺の「今」だよ、FURAGOは。
俺はいつの時代も、ヒップで在り続けたい。それだけなんだ。


(インタビュー / 文責:YK)

2012年5月8日火曜日

2012年のGET LOUD〜山本志歩×長澤成啓〜



それぞれ2人のフロントマンを擁するwearerとFURAGO。
その編成の中で「第三の男」として着実にバンド・サウンドを支えているギタリストが山本志歩(wearer)と長澤成啓(FURAGO)だ。
自己主張が強いギタリストたちの中で、飛び抜けて謙虚な2人。
その2人にとって、バンドとは、お互いのプレイとは、そしてギターとは。


例えば、wearerはツイン・ヴォーカルでメロディが前に出る音楽をやってる。FURAGOだったら、シンセサイザーの鳴りが印象的なダンス・サウンド。そういう音楽をやる中で、ギタリストとして気をつけてることってあります?

長澤成啓(以下N):なんだろうね…場面場面でシンセなりギターなりが前に出てくる場所があるので、まずそれを踏まえるってことですよね。大体FURAGOはシンセが前に出てくることが多いので、フレーズだったり、フワーっとうわものが鳴っているところに、下からギターをのせるって感じですよね。
山本志歩(以下Y):やっぱりwearerで一番大事なのは歌で。その辺はげーしー君(長澤)と似てると思うんだけど。リード・ギタリストって感じじゃなくて、バッキングで全体の雰囲気を司る担当なのかなって。 



ふたりとも、テクニックも経験もあって、もっと前に出てこられるはずなのに、それをしないっていうところは共通してるよね。

Y:それは性格もあるだろうけどね(笑)。
N:それはあるね(笑)。

2人はそういう前に出てこないタイプの人間なのに、ギターを選んだっていうことが不思議だよね。

Y:触ったときに一番楽しかったんだよ、ギターが。学校にいればさ、リコーダーでも鍵盤ハーモニカでも、あるから触るじゃない?音楽に興味なくてもさ。そうやって触ったとき、ギターが一番楽しかった。
N:僕、一番最初はベースをやりたいと思ってたんだよね。でもバンドやるあてがないからとりあえず家でひとりで練習すること考えたとき、ベースじゃ練習にならないなと思ってギターを買ったのね。そこがはじまりかな。
Y:ちゃんと先のこと考えて、目的があって、ギターを選んだんだね。
N:そうだね。家で練習するならギターがいいなと思って。
Y:俺、何にも考えてなかったからさ。「おお、いいね!」っていう(笑)

はじまりからして対照的だね、2人は。
お互いのプレイ・スタイルについてはどう?

N:すごくリンクするっていうか、近い部分はあると思う。フレーズが似ているとかはないんだけど、音作りにしろ方法論にしろ、こういう感じでくるんだろうな、っていうが結構わかるっていうか。
Y:自分に絶対的に課せられている役割があるとすれば、印象的なメロディを弾くことなのかなって。歌メロとは別のサブ・メロディを見つけるっていうのが俺の仕事。音数とかテクニックとかは要求されてないんだけど、とにかく「いい感じ」のものを「見つける」。それが俺のスタイルなのかなって。そういう意味では共通する部分はあるよね。でもFURAGOの方が音数多いし、大変そうだけどね。
N:wearerは歌ありきの音楽で。ギターも歌メロの延長っていう部分が少なからずあると思うんだけど。FURAGOは、器楽的な要素を要求されるので。ファジーな部分がないんだよ。「こういう音で」とか「こういうフレーズ」でっていうのが明確な注文としてくるんだよね。
Y:FURAGOのギター・フレーズは、完成度が高い感じがするよね。
N:それは僕自身の能力というよりか、バンド全体のアレンジの要求に応じた結果というか。FURAGOの音として「この部分を担当してくれ」っていうのがすごく明確だから。最初は戸惑ったけど、最近になって、その要求に自分のスタイルをうまく混ぜられるようになってきたかな。

お互いのエフェクターを見て、印象はどう?

Y:がっちり組んであるように見えて、2人とも結構中身は変えてるよね。
N:意外と流動的だし、ルーズだね。
Y:一通りあるなーって感じだよね。歪みと空間系とモジュール。
N:でもやっぱり、方法論的に似ているなって感じるよね。Nova Delay(TC Electronic製。いわゆる空間系のエフェクター)とかはおんなじだし。

中でもこれは肝だってエフェクターはどれなの?

N:やっぱりNova Delayかなあ、これがないと「canti iikura」とかは弾けないので。これ何がすごいかって、数値でテンポを設定できるから、同期を使ってないうちみたいなバンドには必須なんだよね。うちはテンポありきで、曲を決めていくから。ライヴの時には、このディレイのテンポに、スミタ(FURAGOのドラマー)にあわせてもらう。
Y:wearerもそう。これがないとできない曲あるよ。

アンプについてはどう?

N:フェンダー(のツイン・リバーヴ)があれば、それを使うことにしてるかな。マーシャルだと手元のニュアンスが出ないんだよね。
Y:エレキ・ギターに関しては、アンプも含めてひとつの楽器だからね。「アンプ7割、ギター3割」とかっていうんだけど。アンプの持ち込みを許される状況であれば持っていく。自分が持っているものの方がストレスないからね。もちろん、ライヴハウスにお気に入りのものがあれば、それを使う。
今は持ち込みのアンプヘッドはフェンダーのベースマン。がつんと低音が出る。自分のひとつの特色だからね。あとは…50Wのアンプの方がくすんだ丸い音が出る。好きなんだ。100Wより50Wの方がフィーリングがあうんだよね。

アンプを持ち込める環境なのは、ありがたいよね。
wearerは、僕(YK)のアンプも志歩くんがメンテナンスしてくれているからね。

Y:でも結局、そのひとの頭の中で鳴っている音が一番大事なんだよね。機材にはこだわるけど、そっちのほうが大事。俺がげーしー君と同じ機材使ったからと言って、同じ音はでないからね。

やっぱり2人はサウンドに関して人一倍こだわりがあるんだね。そんな2人から見て、自身のバンドが擁しているソング・ライター(FURAGO:soosu / wearer:YK)についてはどう?

N:うーん、なんだろうな…今までにないタイプだっていうのは思うよね。まず発想が普通じゃないので(笑)。曲を持ってくる時、ただ持ってくるだけじゃなくて、コンセプトまでくっつけて持ってくるんだよね。「この曲はフジロックでやってるイメージで」とか、具体的なヴィジョンがある。最近はより具体的に(他のアーティストの)既存の曲を挙げて、マッシュ・アップ / カット・アップしたり、そこから新しいものをつくってFURAGOにしていくっていう手法をとっていて。そういうところはコンポーザーとしてすごいなって思う。
Y:「選ばれた人」なんだなと思うよ、YKは。「いい曲」っていうは誰にでも作れると思うんだけど…「変な曲」を書くんだよね。「ひっかかる曲」というか。そういう曲を書くことができるのはごく限られた人だと思うんだよね。ジャンルで括れちゃうような「いい曲」を書くバンドはたくさんいるけれど、YKの曲はちょっとはみだしてるというか。

2人はほんとに縁の下の力持ちって感じだよね。実力にたいして謙虚っていうか。そんな2人にも、ギター・ヒーローってあるんでしょ?

Y:あるよ。ジミ・ヘンドリックス。
N:ああー。
Y:それも最近だけどね(笑)。25過ぎくらいから。それまではなんかだるくて退屈なイメージしかなかった。
N:僕はミーハーな子だったので、もともとギターを始めたきっかけは、B'zとかビジュアル系とかだったんだよね。…でも今のギターヒーローは、スタジオ・ミュージシャンの佐橋佳幸(ギタリスト / 作曲家。坂本龍一、桑田圭祐、佐野元春など、多くのミュージシャンとの仕事で知られる。小倉博和とのユニット「山弦」でも活動中)とか。ギターのスタイル的にもすごい影響受けてる。
Y:勝手な印象なんだけど、初めて見た時から、げーしー君はジョン・フルシアンテが好きなんじゃないかなって。
N:いや、ジョン・フルシアンテは全然通ってないよ。
Y:そうなんだ?
N:ロック系のギタリストはまったく通ってない。最近の嗜好では、スタジオ・ミュージシャンと…あとは、やっぱり…そう、ジョージ・ハリスンが一番かな。

すごいの出てきた!(笑)

N:いや、ほんとすごいんだよ、ジョージ・ハリスンは。

今すごい納得する回答が出てきたなあ。でも、言われてみれば、ふたりともジョージ・ハリスンだよね。わがままなソング・ライターたちを影で支えるっていう。

N:FURAGOではまったく出してないんだけど、僕スライド・ギター大好きなんですよ(笑)。
Y:今度スライド・ギター教えてくださいよ(笑)。

(笑)。そろそろ時間だけれど、何か言っておきたいことはある?



Y:探求心がある人はいつ見ても新しくなってるし、見てても楽しい。お互いがそういう存在であればいいな。さっき「好きなギタリストはジミヘン」とかって言ったけど、実際は身近な環境で一生懸命やってる人にこそダイレクトに影響受けるよね。「GET LOUD」(2011年公開の映画。ジミー・ペイジ、ジ・エッジ、ジャック・ホワイト。3人のギタリストについてのドキュメンタリー。3人の対談やセッションも収録されている。)みたいに、こういう感じでギタリスト・ミーティングしてさ。今はそういう意味では恵まれてて。周りにいいギタリストがたくさんいるから。

なるほどね。

Y:ライヴハウスに入ってきた人がぱっとバンドを見て「いい感じ」だなって思うきっかけって、やっぱりギターの音じゃないかなって思うんだよね。それは俺がギ タリストだからそう感じるのかも知れないけど。だから自分のギターの音には、責任やプライドを持ってやってる。

じゃあ最後に…2人にとってギターとはなんですか?

N:ギターとは「手の延長」ですよね。

「手の延長」?

N:そう。生活している、息をしているのと同じくらいのレヴェルで、ないとだめなもの。

そうかあ。げーしー君らしいなあ。志歩くんは?

Y:ギターとは「自分の声」ですね。

それ考えてたでしょ(笑)

Y:考えてねえよ(笑)「GET LOUD」でジミー・ペイジおじさんがそう言っててさ。間違いないよ(笑)

そりゃ間違いないわ(笑)


(インタビュー、文責:YK)


2012年4月25日水曜日

this album(YK from wearer 編)

お世話になっております。
センチメンタル日本代表、wearerのYKです。
ここ最近は、燃え尽きるほどヒート、はげあがるほど残業です。

果たして、僕たちが日々振り回されている音楽とやらに、人生を変える力があるかどうかはわかりません。
だけども、音楽におんぶにだっこの僕らの毎日、振り返ればそこにはいくつもの大切な音楽があることだけは、まぎれもない事実でしょう。

此の度、6.16(土)に2マンライヴを催す事となりました、僕らwearerとFURAGO。
そんな僕らのことを少しでも知っていただけたらと、僕らの大切な音楽、特にアルバムについてお話ししていきたいと思います。
今はデータで音楽をやり取りできる時代。
言わば音楽を「パーツ」としてとらえることのできる時代。
このご時世に、「アルバム」っていう単位で音楽を求める人は、果たしてどれくらいいるのかしら。

まずは言い出しっぺのこのわたし、YKの「this album」の話。

僕が音楽というものにいつ興味を持ったのかはっきりとした記憶はないけれど、小学生の頃、テレビから流れてくる音楽や、ファミコンの音楽をラジカセで録音して聴いていたことは覚えている。
「やっぱり猫が好き」の主題歌だった、矢野顕子さんの「David」、すごく好きだったな。
「夢で逢えたら」でかかってたリンドバーグやユニコーンはほんとによく聴いてた。
ファミコンだったら、「MOTHER」の音楽に夢中だった。


自分でラジカセにいろんなBGM録音して、今にして思えば、あれってサントラみたいなもんだよなあ。
テープにおさめた音をイヤフォンで聴くと、まるで自分がその世界の中に入っていけるような気がしていた。 
「はてしない物語」の主人公が、本の中に入っていくみたいにさ。
そうやって作ってた自分だけのコンピレーションみたいなカセットテープが、僕にとっての一番最初のアルバムなのかも知れない。

お金を払って音楽を買うようになったのは中学生になってからだった。
僕が生まれて初めてお金を払って買ったアルバムは、おそらくこれだ。

 

GUYS / CHAGE&ASKA
今聴いても、AORにドーピングかましたような濃密かつ元ネタ不明のオリジナリティ溢れた音に圧倒されます。
僕はブルーハーツでもなく、X JAPANでもなく、もちろんビーイングの数々のアーティストにも見向きもせずに、当時修行のようにチャゲアスばかり聴いていたのだった。

「SAY YES」とか「YAH YAH YAH」みたいな、攻撃力のあるシングル曲はないんだけれど、どれも噛み締めれば噛み締める程味わい深いトラックばかり。特に「no no darlin'」 や「今日は…こんなに元気です」は本当に名曲です。必聴。

あと、ASKAさんがいつも歌詞カードに、歌詞以外の詩作を載せていて。
それが子供心にすごくかっこよかったんだよな。
それをまねっこしてノートに詩のできそこないみたいなもんを書き始めたのが、音楽的な創作の第一歩かも知れない。
いやはや、そこから作曲に踏み入るまでは余裕で10年以上かかりましたけども。

それから、僕がチャゲアスの何に惹かれたかって、やっぱりふたりがものすごくキャッチーで魅力的な存在で、バンド(チャゲアスは二人組の「バンド」なのです。)の成り立ち方そのものに、豊かなストーリーを感じることができたからだと思う。
僕は音楽の難しいことなんか、正直よくわからないから。
僕が誰かミュージシャンのことを好きになるとき、楽曲以上に、それを通じて伝わってくる人となりに惹かれているってことなんだと思う、結局は。

ビートルズやYMO、ブラーやオアシス、スーパーカーだって、僕の中では、みんなそう。すごくストーリーがあって。
僕は音楽が好きだったけど、音楽をちゃんと始めたのは(始めることができているとするなら、ですが)ごく最近だから。
だから、自分が音楽をやれない分、彼らのストーリーをなぞって、日々をやり過ごしていたんだ。きっとね。

僕らも、誰かにストーリーを感じてもらえるような存在になることができたらいいな。
だから嘘がない歌を歌いたいと、今日も強く想うのです。

さて、僕の「this album」の話はここまで。
次は誰が話してくれるのかな。
どうか、wearerとFURAGOに、みなさんが少しでも興味を持ってくださいますように。
どうぞよろしくです。

(YK from wearer)





2012年4月20日金曜日

「無意識の美意識」〜YK、180分独占インタビュー〜



—出会って一年くらいだけど、最近のライブ、良い意味で野性的だよね。
そう?あまり意識してないんだけど、嘘が無いものをやろうとしていたら、 
たぶんそうなったんだ。 
僕はみんなに素の自分を見せたいなと思っているから、普段から。 


ーYKのシャウト増えてるし。 
お客さんとのコミュニケーションをもっととりたくて。 
僕がすかしててもね。気持ち伝わらないし、面白くないでしょ。


—でも、「行くぜ!」じゃなくて「行くよ!」てのがYKらしい(笑)
 無意識なんでね。それが僕なんだろうね。


—今回歌詞を拝読させてもらって、改めてYKのセンチメンタリズムに触れたよ。全曲通して基本的にラブソングだよね。特定の誰かをイメージしてみたいなのはあるの?
良く言われるんだけど、誰かってのは全くない。 
というより、僕が歌う「君」はみんなのことだから。


—博愛・・・
「baby blue」もラブソングじゃないんだよね。 
 ラブソングとしての体裁をもった歌って、 
「失ったもの」とか「大切なもの」を伝えたいときにとてもスムーズだから。


—さらっと言っちゃうのがすごい。 作詞のテーマみたいなものってある?
「至らない自分と届かない気持ち」が永遠のテーマ。 
僕はそういう人間だから。  
きっと死ぬときも「ああしたかったな」って思っちゃう人間。


—根底にあるのは「後悔」だね。
 亡くして完璧なものってあるじゃない?金閣寺とかね。


ー三島由紀夫の『金閣寺』のこと?
そう。あれって主人公が現実と理想のギャップに悩んで、 
最終的に金閣寺を燃やしちゃうっていう。 
現実の金閣寺はなくなるんだけど、 
そのかわり自分の心の中にだけ大切な金閣寺は残るっていう。 
亡くなったものって完璧なんだよ。


—・・・・。作詞するとき大切にしてることってある?


等身大ってことかな。嘘がない自分が一番伝わるから。 
普段は働いてるけど、ロックが好きで、
だから「今夜君の前ではロックンロールスターでいたいんだ」ってことだから、 
僕は。


—YKって歌詞で読んだことはあるけどなかなか口に出せないことサラっと言うよね。
ていうか言葉に出ちゃったものしか歌詞にできないから。 
それが僕のメソッド。


—最近、YK界隈で定着してきてるよ、YKメソッド。
いろんなミュージシャンがいるけど、僕はこれしかできないからね。 
自分にしかできないものは嘘がないもの、
腹の中から出てきたものをみんなに伝える為に 
ブラッシュアップしてくってことだけ。


—さて、wearerの音楽的なアプローチの話を聞かせて欲しいんだけど。俺ら同世代な訳だけど90年代〜00年代をリアルに通ってきたことをまじめに表現してるなと思うんだよね。
10代の頃っていろんな音楽があって、 色々通ったけど、基本はポップミュージックってすごくクールなものなんだよね。UKならオアシスがいてブラーがいて・・・(中略)。で 、90年代が終わる頃にくるりの「ばらの花」とダフトパンクの「One More Time」が出てきて。僕は彼らに「ポップなものってかっこいいだろ」って教えてもらったんだ。あのときの気持ちをずっと持ってやってきたい。


 —話題を戻しますが、wearerのアプローチってシンプルでストレートだよね。
例えるなら、正拳突きを極めるってこと。空手で言えば。


 —ちょっとよくわからない・・・
空手の基本なんですよ、正拳突きは。 基本であり、シンプル。で一番強い。 
テクニックがないぶん、楽曲のシンプルさでしか勝負できないから。 
で、僕は4つ打ちにツインボーカルと心揺さぶるメロディてのが大好きで。 
90年代的なサウンドや世界もとことん好き。 
だから大好きなフォーマットをお腹いっぱいになるまでやりたいんだよね、 
wearerでは。


—YK、草食系の空手男子だったとは・・・そんなYKさんですが、90年代を知らない若い世代にはwearerってバンドがどう映るか気にならない?
確かに気になるよね。 
でも僕は、リアルに90年代を知らないお客さんには  
「あの頃の音楽ってこんなかっこいいんだぜ」ってことは伝えたいと思ってる。 


 —もはや梨園の域・・・さて、YKの歌詞の世界についてだけど、「Survive」はすごく気持ちいい日本語だよね。ウィットも富んでるし何より歌いたくなっちゃう歌なんだよな。苦労した?
  
  いや、基本ひとりで宅録で作った曲なんだけど、
歌のせた時にはときにはもうあんな感じで歌ってた。


 —「疲れ果てた〜」って言ってたの?
 言ってた。歌詞は10分でできたもん。


—無意識に出てきたってやつね。俺もそういうことたまにはあるかな。「東京の夜が廻りだす」は?
これはまず、なんとなくのイメージが先にあって。 
ライブでミラーボールが回ってて、 
ゆるーく踊れる曲あったらいいなってずっと考えてて。 
メロディ作って、リハで歌詞のせようかなて思ったときには 
もうああいう風に歌ってた。それでもうこれでいいじゃんて。


—ただwearerの中で「東京の〜」だけ歌詞がファジーだよね。お客さんおのおの想像してね的な。
「東京」っていうキーワードがとても90年代的なんだよね。 
僕らってほら、東京って響きに「きらびやかで華やかなんだけど少し寂しい」 
みたいなイメージがあるじゃない? 
それを僕らがやったらどうなるのかなって。 
だから頭で「東京」って歌った時点であの曲は完成。 
それだけで良いんだ。だいたい後は無意識に出来上がってた感じ。


—それにしても無意識に作詞できるのスゴい・・・
えいちゃんのこと考えながら歌詞を書いた事もあるけど 
それは一つのスタディケース。 
やっぱり僕の場合は、 
自然体で等身大の自分を表現することだけが強みなんで。 
無意識を大事にしている部分がある。


 —新曲「Rock’n roll star」だけど、ストレートにきたね。
あの曲に関しては、えいちゃんのエモーショナルな部分を出したかったんだ。


—「Rock’n roll star」ってすごい勝負タイトルだと思うんだけど。
勝負したって感じは全くなくて、素直に出てきたものなんだよね。 
歌の中に出てきちゃって、なぜかすごくハマったのでそのまま付けちゃえと。 
オアシスが好きだって部分を素直に抽出した部分もあるけど。


—でも、Aメロのまくしたてる感じが、wearerにしては新鮮じゃない?
これについては内容がどうではなく、 
スタイルとしてことばを詰め込むってことが大事だったんだ。 
「何言ってるかわかんないけど、なんかこいつ言ってるぞ、 
言いたいことがあるんだな」 みたいな雰囲気を伝えたくて。 
内容ではなく 感情表現として。


—新境地だよね。 
そうだね、これからこんな感じも取り入れていきたいなと思ってますよ。



—最後に、6.16初2マンにむけて。
僕は、音楽をやっていく上で1番のご褒美は、 
仲間を得られることだと思ってます。 
去年はFURAGOという最高の仲間に出会えて。 
そのFURAGOと初めての2マンをやることができて、本当にうれしいです。 
場所は僕らが出会った渋谷LUSH。 
どうか、6.16、LUSHですてきな出会いがたくさんありますように。
 僕ら、きっと最高の最高を更新します。
  どうぞよろしくお願いいたします!



聞き手:soosu(FURAGO)